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第5回 欧州旅行。修道院、伯爵の家。

 カペラゴーデンの3週間のサマーコースを終了し、ヨーロッパ旅行に出発しました。コペンハーゲンへ移動し、数日を過ごしてから僕の生まれ故郷でもあるドイツに入国しました。電車での移動でしたが、特に変わったこともなくあっさりしていました。ハンブルクに泊まり、比較的近い街リューベックを訪れました。ここは古いドイツの街で重厚な門があることで有名な街です。20世紀最後の日食を見ることも出来ました。

 その後、ケルンへ行きました。ドイツ最大のゴシック建築である大聖堂が駅横にそびえ立っています。600年以上かかって建設されただけあって圧倒される大きさでした。カメラに収まらない存在感で一見の価値ありです。初めてたくさんの大道芸人を聖堂前広場で見ました。

 FCケルンのサッカーの試合を見に行きました。雑誌を見て試合日を調べて直接、競技場へ出向いて当日券を買いました。初めて見るブンデスリーガのサッカーで、雰囲気に驚きました。アウェーの席に近いところに座っていたのですが、ホームとの境は高いアクリル製の壁が立ちはだかり、警官が境界の1区画全てにいました。それでもゴールが決まった時の客達の喜びはすごかったです。ただイヤな体験もしました。競技場へ行く路面電車内であやうくスリに合うところでした。満員電車での目の前にいる女の子が犯人でした。すぐに僕は気づき盗られることはなかったのですが、かなり気分を害しました。数人のグループで狙っていたようです。

 ベルギーの古都、ブルージュへ向かいました。滞在中はカトリックの修道院に泊まりました。ここにはシスターである祖母の妹が住んでいます。とても静かな建物内でゆっくりした時間を過ごしました。外部との積極的な交流をする修道院とは違うタイプの、祈りを中心とするタイプの修道院で、清貧な生活の中で活動しています。

 客用の部屋も必要最低限の家具があるだけなのですが、とても落ち着く場所でした。ただし、街中が古い石畳のために修道院の近くを車が通ると随分と音が響きます。院内の庭もとても綺麗なところで中心に日本の桜がありました。春には綺麗な花が咲くそうです。

 毎朝食で一緒になる老夫婦がいました。彼らはいつも早朝のミサに来て朝食を食べてから帰るのだそうです。スウェーデンに行って、木工のサマーコースに参加してきたことを話しました。天気の良い日に芝生の上で寝るのが気持ちよくて好きだということを話すと、彼らは"私の家に来て寝るといい"と誘ってくれました。

 その日は街に行く予定だったので、どうしたものかと考えたのですが、シスターが、素晴らしい庭だから、ぜひ行ってみるといいと勧めてくれました。彼らの古そうなフォルクスワーゲン・ゴルフに乗せてもらい家へ向かいました。街を出てちょっと郊外へ行ったところで、大きな門をくぐり、大きな建物の前に止まりました。

 美術に興味があることを話してあったので、何かの博物館かな?と思い、尋ねてみると、"ここが私達の家だよ"との返事。なんとすごい大邸宅でした。庭もちょっと芝生で寝るなんてものではなく、驚異的な広さで唖然としました。家の中を自由に見ていいと言われました。それまでの街の美術館で見てきたような物がゴロゴロしていました。

 庭の散歩に行きなさいと勧められて、まずは地図を見ました(笑)。散歩なのに傘を渡され、"天気が変わりやすいから"とのこと。実際、建物正面に軽く50メートルくらいはありそうな池がありました。庭を歩き出し、言われた通りの道をたどるのですが、少し迷ったりしながら森の中を歩いていきました。

 このような所があるんだなあと思いながら、家へ戻り昼食をいただきました。キッチン内の小さなテーブルで普通の食事でした。40人くらいは住めるようなのですが、現在は2人だけで住んでいると聞き、また驚きました。

 修道院へ帰ってからシスターに聞いてみると、彼はベルギーの伯爵だと教えてくれました。身分を明かさないで、ここの教会にいつも来ているのだそうです。これで見てきた物に納得がいきました。しかし、車もそうでしたが、服装や普段の生活の仕方には贅沢のかけらも無く、とても良い印象を受けました。

 この旅行に出て一番のすばらしい体験でした。この後もさらに南へ向かいました。 

リューベックの街の入り口ホルステン門。
ケルンドーム。大きすぎて写真の枠に入りません。
庭の一部。遠くに家が見えています。
訪れた家の一部屋。
修道院の庭。