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第11回 生の木の加工を学ぶ。

 2000年の8月にカペラゴーデン木工科へ入学しました。初日は入学式のようなものというか、始業式が図書室で行われ、その後は各科で自己紹介になりました。木工科ではこの夏の間に何をしていたかを各々が述べました。

 数日後の最初の課題は生の木を使っての掘り物でした。まだ切り倒されてからまもない水をたくさん含んでいる木を使いナイフなどの刃物だけで物を作るというものです。生の木の特性、木目の見方、木取りの方法、刃の入れ方など作業を通して体験し覚えていきます。

 北欧の北の地方に住んでいるラップ(サーメ)人と言う放牧民族が水を飲む時に使うコーサと言うコップを作りました。

 カペラゴーデンの教育方法の特徴の一つだと思うのですが、教科書で学ぶのではなく、物を作ることを通して実体験から学んでいくという過程がこの時から始まりました。作業の中で疑問に思うことがあれば、先生に質問をし、それに対する適切なアドバイスをもらうことができます。

 木工科にはキャレとベンクトという二人の先生がいます。キャレは毎日、ベンクトは月曜から水曜までの3日間、カペラゴーデンへ来ます。二人は僕の印象からすると違うタイプの先生で、質問にも違う答えが返ってくることが度々あります。

 他の学生達もキャレとベンクトは違うことを言うよねと困ることがあるようです。どちらの答えも間違っているのではなく質問に対するいくつかある正しい解答の内の一つなのです。学生はそこでどのようにするかを自分で考え判断します。どちらの方法も嫌ならば、まだ他にも良い方法があるかもしれません。

 生の木の加工で最初に感じるのはとても柔らかいことです。水を大量に含んでいる為に刃物が簡単に入ります。刳り物(くりもの)用のスイス製の刃物が非常に使い易い印象を受けました。木目の動きに沿って刃を動かします。

 次に木目の見方次第で、掘り進んだ後に現れる模様が大きく変わることを覚えました。作業をするとよく分かりましたが、加工していく為の行程もよく考えられていて、まずは内側の加工をし、その後に外側を整えていきます。内側はちょどコップ一杯分となるように実際のコップの水を入れて穴の大きさを調節しました。

地道に成形作業中

 外側はある程度まで大まかに取り、最終的にはナイフで削って仕上げました。2.3日の間に集中して作り上げるのですが、肉厚が薄くなってくると急激な乾燥との戦いともなってきます。木は熱や湿気の上下によって大きく変化をします。木が動くというのですが、コーサを作っている間はこの乾燥との戦いとなります。普通に乾燥させてしまうと木が縮み、割れてしまいます。

 作業中、乾燥を抑えるにはいくつかの方法があります。加工があまり進んでいない内は材料の木口面に木工ボンドを塗り、紙を貼ってしまいます。乾燥は木口面からがほとんどなのでこれだけでかなり防ぐことができます。

 加工が進んでからは、カペラゴーデンが好んでいる方法として、蒸かしたジャガイモを全面に擦り込む方法があります。デンプンが乾いて固いフタのようになり乾燥を防ぎます。ただ、次の作業を始める時にそれをはがすのが少し大変です。

 密閉したビニール袋の中へ入れる方法もあります。袋内は高い湿度に保たれるので乾燥を防ぐことが出来ます。バケツの水に沈めておくこともできます。僕は手軽なのでそのようにしています。これならば加工中に乾いてきても再び水中に入れることで湿らせる事ができます。

 加工中は刃を入れるだけで木の水分がジワッと染み出てくるのですが、完成後は逆にうまく乾燥をさせなければいけません。普通に外気にさらされる場所へ放置しておくとほぼ確実に割れてしまいます。

 時間はかかりますが方法としては、細かい木のカス達、大鋸屑(おがくず)の中へ入れておきます。こうすることによって周りの木屑達が湿気をゆっくりと放出してくれます。湿度計を入れて計ってみたところ70パーセント近くありました。けっこう高めですが、この状態で数日間待ちます。

 しっかり乾燥していると、少し形がゆがみますが割れることなく完成します。サンドペーパー等でナイフの跡を消したい場合や、磨き上げたい場合はこの後に加工をします。逆に手で加工をしたという証拠ともなるナイフの跡をそのまま残すのも綺麗です。

 この課題では木の基本的な性質を学ぶことができとても興味深いものがありました。


まずは内側から掘り始めます
外側の荒取り後。周りの道具を使用しました。
全体の厚さが均等になるように仕上げています。
ナイフの跡を残したまま、仕上げています。
小さいスプーンも作りました。
定規と比べると大きさが分かるかな。
3種類が完成。