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第24回 番外編 - メルセデス・バス -

Mercedes-Benz 310
今回は僕が所有している車、メルセデス・ベンツの話です。

 2000年冬、スウェーデンに来てから数ヶ月経ち、カペラゴーデン特有の不便な環境に困り始めていました。バスが近くのバス停に来るのは本数が多い朝夕で1時間に一本だけ。さらに歩ける距離に街も、食料品店も皆無なので、どこかに行ってみたい所があっても、買い物をしに行きたくても一苦労という状況でした。

 車の所有を考え始めていましたが、新聞広告にでている個人売買の人と渡り合える会話力も無く、町中の販売店で購入するほどの資金力もありませんでした。僕の理想は荷物も積めて、車内で寝られる広さのあるボルボのワゴン車でした。15年前くらいの中古車だと数万円くらいで見つけることも可能らしいと知りましたが、どうやって見つけるか考えねばいけませんでした。

 そんな時、知人が車を買い換えるという情報が入り、すぐに”興味あり!”と尋ねてみると、メルセデス・バスと言われる大きな車らしいと分かりました。サビもたくさんあるし、トラブルもちょこちょこと起きると言われましたが、元々、錆びることは気にしていないので、希望の条件は完璧に満たしてくれる車でした。

 スウェーデンの中古車情報を見ていて分かったことは、車の相場は日本よりも高いということ。さらに四輪駆動車や、ワゴン車はさらに高くなっていました。日本では走行距離が1万キロを超えている車はかなり安くなりますが、こちらでは三,四万キロは普通に走っている車ばかりです。

 この車(90年型)は家具を運んでヨーロッパ中を営業していたそうで、すでに29万キロ近くを走破していましたが、エンジンは前の所有者が積み替えていたこともあり、調子は悪くなさそうでした。値段はけっして安くはなかったのですが、スウェーデンに来たばかりの僕が個人売買で購入できること、大きい車が手に入ることを考えると納得しました。すごく安い車を探しても、今後の修理にお金と時間を取られるリスクよりは最初にお金をかけることにしました。

 ストックホルムへ出向き、所有者と一筆を交わしただけで、Mercedes-Benz 310は僕の物となりました。しかし、前日に購入しておいたスウェーデン道路地図を忘れてしまい、いきなりストックホルムの高速道路周辺をさまようことになってしまいましたが、なんとかショッピングセンターを見つけ、適当な地図を入手しました。ストックホルムからカペラゴーデンのあるエーランド島までは最短距離で走っても6時間はかかるのに、確認すると数時間のロスとなる見当違いの方向へ走っていました。まだストックホルム圏内でした。

計器類を全て木に取り付けました。もちろん機能します。

 カペラゴーデンへ無事に到着し、数日後から”作業”を開始しました。運転席のダッシュボードを全て外し、木製にしようと計画。とりあえず配線や、構造を知る為に試験用の板に取り付けることにし、さらに車内に張り巡らされていた機能しない防犯装置も外しました。壊れていたクラクションも直しました。全長5.5メートルで高さは2メートルを超えているので車内でも立ちながら作業が出来、とても楽です。

 しばらくしたある日、走行中に警察の検問でかなり怪しまれてしまうことになったのです。IDカードを見せて、なぜ運転席周りが丸見えになっているのかを説明し、カペラゴーデンの学生で、木で作りたいんだと言ったら納得してくれました。警察官からは、このままだと確実に車検は通らないから元に戻した方がいいとの警告。結局、オリジナルに戻しました。

 走行系にもトラブルが発生しました。元の所有者からも言われていたのですが、ある一定のスピード域(85キロくらい)で走行すると、すごい振動が発生するのです。ホイールバランスの問題だと当初は思っていたのですが実際はタイヤの進角などが大きく狂っていて、条件が重なることで揺れの振幅が重なり、さらに揺れが増幅していたと考えられます。大型車専門の工場で再調整してもらったら全く問題無しになりました。

 またある日、街中で駐車禁止の違反切符をワイパーに挟んで置かれてしまいました。振り込み用紙付きの警告書で、僕は通学バスの停車スペースに駐車してしまっていて、2500円くらいの罰金でした。しかし、未だにバスがそこを通っているのを見たことがありません。

 さらに春が近づいていた頃、エンジンが始動せずセルモーターを回し続けた事でバッテリーがあがってしまいました。翌日、バッテリーを完璧に充電し、再挑戦をしてみると今度は何も反応が無く、車の下に潜ってセルモーター自体を外してみると、壊れてしまっていました。メルセデスに出向きパーツ注文をしようとしたら、6万円くらいすると言われてしまい、とりあえず自分で直してみることにしました。

 パーツを探しながら巡った4件目の小さな工場がセルモータの専門店でした。その場でチェックをしてくれましたが、結論は修理不能で、僕の車に対応する物を取り寄せてくれることになりました。でも、新品はすごく高いよと言うと、2万5千円くらいだと言われ、即断。日本だと外国車のセルモーターは10万円くらいは平気でするらしいから得したはずだと自分を納得させました。数日後にドイツのボッシュ製のモーターを受け取り、取り付けると力強く動作しエンジンもすぐに始動しました。まだ3月だったのに、一週間近くを修理に取られてしまい風邪をひきました。

 スウェーデンの車検は年に一回、自分で車検場へ出向いてチェックしてもらう形式です。新しい車だとすんなり合格するのですが、古い車はいろいろと問題が見つかります。車検前に基本的な所(ライトなど)は自分で直して行くのですが、どんな小さな事でも問題ありと思われると再検査になってしまいます。初回の検査料は値上げをした今年でも6000円程度。再検査も3000円ほど必要になります。

 スウェーデン人にとっての車検は”歯医者に行くよりも憂鬱な事柄”だと新聞に書いてあって笑いました。

 再検査日までに、修理工場に持って行くなり、自分で改善せねばいけません。こちらに来てから驚いたことは、多くの人(女性も)が部品を買ってきて、自分で修理をする事です。僕ももちろんその様にするのですが、さすがにブレーキ関連の修理は命に関わりかねないので、メルセデスの工場へ持っていきました。部品代は安いのですが、自分で修理する人が多い事が示すように、作業工賃がかなり高かったです。後は、再検査にまた出向くだけだなと思っていたら、連絡しておくからいいよ!と言われました。正規の工場の証明書があれば再検査は必要ないのだそうです。

 学校が休みの間、ヨーロッパ旅行をしました。ノルウェーからドイツ、ベルギー、デンマーク、オランダなどなど。今後のメルマガでそのことに触れるつもりですが、ほぼ全てが車中泊で、自炊をしました。とても怪しい車に見えるようで何度も警察に検査をされたり、パンクやオーバーヒートなどのトラブルにも見舞われましたが、現在は走行距離31万キロに達しています。

 その2002年の夏にはそれまでの走行距離が物語るディスクの摩耗が進んでいたので、一万キロ以上を走る夏の旅行の前にリスクを減らす為に フロント・ブレーキを全て交換しました。先日の車検では以前までは長びいていたブレーキ検査がすんなりと通り、一回で合格し嬉しかったです。
カペラゴーデンの駐車場で。
キャンプ場ではこのように机と椅子を。
内部。ベンチは机や調理台としても活用しました。
車検場で。
ブレーキ回りをチェック中です。
オーバーヒート寸前だったので休憩。ドイツのミュンヘン近く。
オランダとドイツの国境で、オランダ警察に止められる。