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第20回 木工旋盤(ろくろ)の特別講義

今回はゲストティーチャーがカペラゴーデンへ来た時のことを書きたいと思います。ここへは様々な方が講師としてやって来ます。その中で僕が1年生の時に来た、木工旋盤の先生を紹介します。木工旋盤とは機械にセットした木を回転させて刃物で削ることを言います。ろくろとも言います。

 僕はカペラゴーデンへ来る前に父の仕事場である程度はやっていたのですが、彼のすることを見て、僕の今までやってきた技術は全くの間違いだったと気付きました。僕のやり方が掻き取るという感じだと、彼はまるでリンゴの皮をむくように、木の表面を加工するのです。

正しい刃の当て方ができていると、出てくる削りカス。

 分かりづらいのですが、僕のやり方だと削りカスは粉のように出てきますが、彼の場合はスパゲッティーのように長く長く出てきます。何が違ったのかというと、刃の当て方と刃の作り方が僕は間違っていたのです。

 正しいやり方を教えてもらって、加工を始めるのですが、つい、癖が出てしまいます。すると"それは違うよ"と指摘されてしまいます。3日間の特別講義でしたが初日はそれの繰り返しでした。

 一通りの基本をやってから、彼の得意とする生の木を使ってお椀を作る作業に移りました。水をたっぷり含んだままの木から彼は10分くらいでひとつのお椀を削りだしてしまいます。手際の良さもさることながら見ているだけで爽快です。作業中は木の中の水が飛んできます。

 僕たち学生も一手順ずつ教わりながら製作をしました。まずはお椀の外側を加工します。これはそんなには難しくはありませんでした。ただ、椀のカーブを綺麗に作り出すにはちょっと慣れも必要です。刃物がちょっと切れなくなったらすぐに研ぐことの必要性と、どの刃物がどの加工にむいているかも教わりました。

今度は内側の加工です。

 椀の脚を加える特殊な治具を使って、片側だけで固定し、今度は椀の内側の加工です。これも刃の当て方と切れが重要なのですが、ちょっとでも違う当て方をすると大きな反動が返ってくるのでおそるおそる作業をしていました。そうすると体に力が入りすぎて、じきに肩がこってきます。リラックスとは言われるものの緊張でした。薄くなってきてから失敗をすると割れたりはじけ飛んでしまうのです。

 先生は3ミリの肉厚まで余裕で追い込むのですが、僕は5ミリが精一杯。たったの2ミリの差ですが、見た目の重さが全然違います。彼の過去の作品にはそれよりもずっと薄い物や、はるかに大きい、直径60センチくらいの物もあり圧巻です。僕の作った物は15センチくらいです。

既に光が透過するほどになっています。

 これらは生の木なので加工後にしっかり乾かさないといけません。No.10で、やはり生の木からの加工について書いたのですが、ゆっくりと乾かします。すると加工直後は真円だった椀が楕円状になったり、もっとゆがんだりして変形します。ドイツで買った旋盤の本にはこの変形を利用して作品を作っている人が何人も載っていました。

 彼の作業を見ていて僕たちと圧倒的に違うのは、木を加工する為の刃を支える手ではなく、微調整をするもう一方の手だと感じました。経験数の違いですね。

 それ以来、僕はことあるごとに旋盤を使って小さな物ですが作るようになりました。毎回が練習ですが、クリスマスマーケットなどの時の実演では旋盤を担当させてもらえたりしています。実は大したことが出来ないのですが・・・

 この先生は今年のカペラゴーデンのサマーコースの新しいコースである、旋盤のコースを担当することになりました。

授業で使用した小型旋盤。簡単に分解して車に積み込めるので便利。
まずはお椀の外側を形成します。
部材を逆さまに取り付け。
底面をさらいます。
スポンジに押しつけながら固定して、底部を仕上げます。
これで加工は終了。この後、乾燥させます。