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第26回 僕の目指ざすもの

先日、ある方から連絡を頂きました。その中の一文に、

「ホームページの更新やメールマガジンの発行はかなり手間と時間がかかります。今優先すべきは何なのかを判断され、残りの貴重な留学生活を送ってください。」

また、別の方からは、

「腕を磨くことに集中してほしい。勉強中の今、作った物を世間へ見せる必要はないし、HPを作ることなどいつでも出来る。(さらに、過去のカペラゴーデンの日本人の名前を出し)、彼らがやってきたこと(職人資格を取得すること等)をキミはまだ出来ていないわけだから云々」

 直後に僕は上記の方を含め、両親知人へ宛ててのメールの中で、これに対する僕の考えを伝えました。それから時間も経ち、今また考えをまとめてみました。

 

留学

 留学経験は僕の父の時代と比べると、今では日本人にとっては珍しくないものになりました。インターネットのお陰で連絡もすぐに出来るし、一時帰国をしようと思えばいつでも帰れるほど、費用もはるかに安くなっているほど世界は狭くなっています。留学しているからとはいえ、木工だけに勤しまなければいけないという風には少しも考えていません。木工をやり、なおかつ新たな事を身につけたいと考えています。

 僕がここにいるのは"学びたい場所がスウェーデンにあった"からであり、"スウェーデンで学びたいから来た"のではありません。もしカペラゴーデンが日本にあったらそこへ行っただろうと思います。実際、最初は僕の生まれた国であるドイツに興味を持っていたのですが、結局はスウェーデンに来ることになりました。

さらにいつも思っているのですが、スウェーデンへ留学していたからすごい人だと思われるようにもなりたくありません。スウェーデンに住んでいたからすごいというのではなく、何を見つけたのか、何をできるのか、何を知ったか、何を感じたかを今後へ続けられる人物になれるようにしたいです。肩書きだけであとは何もしないままの人ではなく、そこから新たに精進したいです。

 この僕の考え方は父からの影響もあります。父はドイツのオルガン製作マイスター(英語ではマスター)の資格を持っています。日本では"マイスター"="達人・名人"と大部分の人が思っていますが、実際はそうではありません。ドイツのマイスター制度は、各々の職業への基本的な知識(簿記などの経営に関する事も含む)、技術を所持していることを認めるものであり、マイスターに頼めば素晴らしい仕事をするという証ではありません。逆にマイスターだということを一番の売り文句にすることも格好いいものではありません。

 ドイツではパン屋を経営する為には"パン屋のマイスター"、理髪店ならば"理髪店のマイスター"の資格が必要になります。もし最高のマイスターばかりを求めているとしたら、ドイツの産業は成り立たないでしょう。というわけで、"マイスター"="自分の会社、店を経営することが出来る人"くらいに思うべきです。ようするに社長になる為にはマイスター資格を持っていないとダメということです。ただし、この制度のお陰で俗に言われるドイツの堅実さが高いレベルで保たれているのだと思います。

 昔の日本で言えば師匠への奉公が終わり、独立したときというのが近いかもしれません。その後も各々が試行錯誤、努力を重ねて技術を極めていく人もいれば、商才を伸ばしていく人もいることでしょう。

 システムはまた異なるのですが、スウェーデンの職人および、マイスター資格は、他のヨーロッパ諸国でも資格として認められています。中高生の時点で興味のある職業研修をできるような、ヨーロッパの職業教育の充実は日本よりもずっと進んでいると感じます。

 いずれスウェーデンでの勉強が終わったとしても、僕はそこがゴールではなく、スタートなのだと思いたいです。

 

インターネットでの活動

 さらに僕のウェブサイトについて話したいと思います。僕は片手間でサイトを作ったり、メルマガで情報発信をしているつもりはありません。木で物を作るのと同じで、コンピュータを使って僕の作品の1つを作っているつもりです。98年末からサイトの製作を始めたのですが、当時の僕が作っていた木工作品はずっと未熟な物でした。それでもいろいろな方に見てもらえる可能性のあるインターネットはとても魅力的でした。

 木工を始めた頃もそうでしたが、コンピュータでの製作に関しては全て独学で覚えました。先生は取扱説明書と数冊の書籍で、とにかく何度も何度も使って試して覚えていきました。普段から頭の中でアイデアを考えているようなところは物作りの考え方とも似ています。未知の機能を知ることも、新たな加工技術を知ることも楽しいです。

 よく、知人友人からも面倒くさがらずに、よくやるよねーと言われますが、現にこうやってメルマガを通し、たくさんの方々に僕のやっていることを知っていただけるわけですし、将来への糧になっていると思っています。コンピュータを使って自分を表現できることは、これからの時代には、それを自分でやるか、人に頼むかに限らず必須になってくるでしょう。

 サイトの製作は僕にとっては手間も苦痛でもありません。自他共(といっても、僕、妻とカペラゴーデンの学生の一部)に認める鬼の速さ(笑)で作業しています。

 僕はウェブサイトを通して僕自身を表現していきたいです。

 

これまでの日本人学生と僕

 今の僕はまだまだ実力不足とは分かっていますが、過去の人達がやってきた事だから僕もそうしないといけないとは全く考えていません。すでに僕は違うベクトル(方向性)で進んでいると思っています。

 僕はカペラゴーデンへ日本の技を伝える為に行っているわけではありません。ひとりの学生として、家具の製作を学びに来ています。日本人として、全てを手道具だけで作ってみるということにこだわる事もしません。もちろんこれは出来るからこそ言って良い言葉だと思いますが、今の僕にはそれよりも知るべき事がもっとあると考えています。

 それに僕には日本の道具や技術を説明するほどのしっかりした知識はありません。木工、家具製作についてしっかりした勉強をするのはカペラゴーデンが初めてだからです。それまでの僕は道具やさんで聞いた知識から、使いながら日本の道具を覚えていきました。スウェーデンに来てからよく分かったのは日本の刃物の素晴らしさでした。特に手鋸(てのこ)は最高だと思います。

 

まとめ

 このサイトは現在進行形ですので、僕が将来どうなるかは全く予想がつかないのですが、僕は木工技術だけの人物にはならないつもりです。もっといろいろな事を出来るようになること、それこそが本当の僕の肩書きになってくれるはずです。

 大事なことですが僕は手で物を作ること、道具を使うことを軽く見ていることはありません。それらのことが出来てこそ、またそれらについて話せるはずです。

 とりあえずの最初の目標はストックホルムのカール・マルムステン校へ合格することです。4月15日が提出期限なので、まだ少し余裕はあるのですが、志願理由と作品集には木工だけではなく、ウェブサイトやネット上での活動も記しました。

これも僕の作品の一つだからです。

記念すべき、初のホームページ。1998年暮れに作りました。
ヘタッピな英語、ドイツ語表示も出来るようにしました。
デザイン変更。丸みを持たせる。
今見ると、凝ったテーブル組みをしているなと思う。しかし、ごちゃごちゃしている(笑)。
やっと落ち着いたページになりました。このデザインで2007年夏まで続けました。