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スウェーデン木工留学記

カペラゴーデン編

2003/04/27

第31回 カトリック山手教会での結婚式

今回のテーマは僕と妻Kazueの結婚についてです。貴重な経験が出来たので紹介したいと思います。のろけではありません(笑)

 「あなた達、結婚しちゃいなさい。」
「は?」

2001年4月、僕はスウェーデンから日本に一時帰国し、お互いの両親の初顔合わせおよび、いわゆる結納にあたる簡単な食事会を行いました。この時点で僕たちふたりは結婚自体は僕の帰国後にするつもりでした。しかし、その晩、お互いの実家で両親から冒頭の様に言われたのです。

「あちらのお母様とはもう話がついているから。」

「え?」

とのことで、カペラゴーデン1年目終了後の夏休みに突然、結婚をする事になりました。僕はこのすぐ後にスウェーデンへ戻ってしまい普通に考えると、かなり大変な事になっていました。

もちろん、籍を入れるだけならば簡単なのですが、僕の両親は教会で神様の前で結婚式をすることを望みました。僕の家族にはカトリックの信者がとても多く、僕も洗礼を受けているので、このことは必然とも言えるわけですが調べた結果、教会で結婚式をするには最低でも半年前(教会によって異なります。)から、教会で行われる結婚講座に出席をしなければいけなかったのです。

僕は父のオルガンの設置されている教会で式を挙げたいと考え、調べた結果、横浜のカトリック山手教会で7月7日だけが空いている事が分かりました。が、山手教会の結婚講座は計3回の出席が必要で、講座スケジュールを見ると僕がスウェーデンから帰ってきてからでは絶対に間に合わない事も分かりました。

まだ、スウェーデンにいた為、問い合わせなどは両親にほとんど頼む事になってしまいました。まず、山手教会所属ではない僕たちが式をするには僕が所属している横須賀の教会から許可と書類を揃えないといけませんでした。さらにカトリックの信者だという証明になる洗礼証明書を添えないといけないのですが、僕が洗礼を授かったのはドイツの南にある街リンダウの教会でした。そこへ連絡をし、証明書を取り寄せ、訳文を用意しました。

日程の問題は、山手教会の主任司祭であるバーク神父様の特別の計らいで、式終了後の講座出席を認めていただくことができました。このように日本では着々と準備が進んでいる中、スウェーデンにいる僕は次年度の滞在ビザの申請準備をしていました。これには日本の結婚証明書などが必要で、ビザ申請準備を急ぐ為に入籍を先にすることにしました。

僕は婚姻届の提出には立ち会えませんでしたが、あっという間に夫婦になってしまいました。5月末の事でした。僕はカペラゴーデン終了後(6月始め)すぐに帰国をし、準備を始めました。まず、上記の2つの教会に出向き、神父様と面談をし、保留していただいていた各種申請書にサインをしました。さらに、式の後には披露宴は行わず、お互いの親族の軽い懇親会をすることにし、夜は僕たちの友達との2次会を行う事を決定しました。

山手教会へ結婚申込金や献金、司祭謝礼を支払いました。献金や謝礼とは言いますが、実際は教会の為に使われる物です。さらに当日の式次第も既成の物がありましたが自分たちで用意をする事にしました。鎌倉の和紙の老舗「社頭」へ行き、良さそうな和紙を選び、印刷をしました。

結婚講座にはたくさんの挙式希望者が参加していました。信者でない方も多かったです。山手教会ではカトリックの信者でない方でも式を挙げる事ができるのですが、信者(どちらか一方でもよい)の者より少し長い準備期間が必要になるそうです。信者でない方の結婚式は水曜日で、どちらか一方もしくは二人ともが信者の場合は土曜日に挙式をすることができます。

講座の内容はキリスト教の勉強ではなく、夫婦になる者としての心構えやトラブルが起きた時に2人でどのように解決するか等をディスカッションを交えて行いました。夫婦歴数十年の方からお話を伺ったり、神父様の講義を聞いたりととても為になる講座でした。

特にその中で驚いたのは、お互いの良い所、悪い所を紙に書き交換するという事でした。言いたかった事や気になっていた事などを書くのですが、予想もしなかった事を書かれていたりもするわけです。このようにしてお互いを見直し、じっくりと考える機会を結婚後も持ちましょうとのことでした。

個人的にはこの結婚講座は、わざと長い時間をかけて講座に通わせることでお互いの事を考えさせ、本当に結婚をする強い意志があるのかを確認しているのだと思いました。

カトリック横浜山手教会

聖堂です

小さな色片が漉き混まれている和紙を選び、式次第を製作しました

7月7日土曜日は前夜まで雨の予報でしたが見事に晴れ、13時半から式が始まりました。父のこだわりもあって知り合いのオルガニストに御願いし音大のトランペット専攻の学生さんに演奏していただきました。式次第はこのようになっていました。

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参列者一同入堂
G.F.ヘンデル:水上の音楽よりAir(オルガン)

新婦入堂
F.メンデルスゾーン:ソナタ第4番よりAndante religioso(オルガン)

開式の祈り
J.G.ヴァルター:Wachet auf, ruft uns die Stimme(オルガン)

聖書朗読

説教

誓約式
結婚の意思の確認
結婚の誓約
「私たちは夫婦として順境にあっても逆境にあっても、健康のときも病気のときも生涯互いに愛と忠実を尽くすことを誓います。」
結婚成立の宣言
指輪の祝福と交換
結婚証書署名
F.ペーテルス:Schmueke dich, o liebe seele(オルガン)

新郎新婦のための祝祷

新郎新婦及び証人退堂
J.クラーク:Trumpet Voluntary(オルガン+トランペット)

参列者一同退堂

友達からも言われましたが、ホテル付属のチャペルなどで行われる”キリスト教式”結婚式などとは全く趣が異なります。式の中では夫婦となる者が神様の前で結婚の意思表示をし、参列者が見守る中、誓約をすることで結婚が成立します。参列者全員が結婚の証人となります。その後、参列者一同で新郎新婦への祝いの祈りである祝祷を読み上げ、神父様から参列者へ向けて「今、ここに新しい夫婦が誕生しました。」と紹介されました。

式の中での神父様の御説教は友達皆から感動したと言われるほど、とても素晴らしい内容でした。記録を残しておかなかったのが悔やまれます。山手教会の主任司祭であるバーク神父様は日本語もとても上手で、僕たちの式を執り行っていただけて本当に感謝しています。

式の翌日の日曜日は新婚最初の朝だったにもかかわらず、結婚講座3回目に出かけたのでとても慌ただしかったです。ちなみに山手教会は横浜開港後、日本で一番最初に建てられたカトリック教会なんですよ。

式が始まりました

オルガンとトランペットを演奏していただきました

「結婚の誓約」はこのように手を繋ぎながら唱えます

結婚指輪の交換中です

聖堂から出てきました

バーク神父様です

記念写真

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!