第32回 日本旅行の為の資金稼ぎ。  
       - マルムステン宝くじ -

 カペラゴーデン家具・インテリアデザイン科では2001-02年度の終わりの5月に日本への旅行を企画しました。毎年、カペラゴーデンでは学科毎に研修旅行として様々な所を訪れます。国内もしくは周辺国がいつも選ばれるのですが、今回は日本への旅行を希望する者が多く、僕にとっては日本へ短期とはいえ、帰れるチャンスとなりました。

 各科とも毎年の旅行の為に資金稼ぎをして積み立てていきます。例えばお菓子の校内販売や陶芸作品の売り上げなどです。木工科もクリスマス・マーケットで小物を売りましたが、日本旅行への必要経費削減にはまだまだ足りません。積み立てが少ない事は、学生が支払う旅費が増える事を意味します。

配布された宝くじのパンフレットです。

 そこで企画されたのが、カール・マルムステンの家具を賞品とした宝くじでした。売り上げが旅行資金となるのです。もちろん旅費の為に働くという事で製作は学生達が行います。2月、各々に担当家具の図面が渡され、抽選日(8月30日)までに仕上げるように通達を受けました。原則的に作業をして良い時間は放課後や休日などの学業時間外だけでした。

 広告のパンフレットや、クジの用紙も学生が製作しました。クジ自体は友人、知人などに売る事から始まり、夏休みのカペラゴーデン展示会の期間中も売り続けられました。これは日本旅行後でも売り上げ次第では、旅費が返金される可能性があるということです。

 賞金総額は現在のレートで200万円を超えています。一覧中の年度はデザインされた年、値段は1クローナを14円で計算しています。

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1等 時計 Tidlosa 1953年 110万円
2等 椅子 Stadhusstolen(市庁舎の椅子) 1916年 39万円
3等 円机 Lappsilver 1965年 33万円
4等 机  December 1948年 23万円
5等 椅子 Talavid 1955年 11万円
6等 椅子 Caryngo 1955年 9万円
7等 スツール Hader 1941年 3万円
8等 お玉 Cirkesdirektor 1964年 2万円
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1等 TIdlosa永遠という名前の振り子時計が内蔵されている美しい時計です。学生3人が共同製作しました。

 このようにスウェーデン人(特に年輩の方)にとっては素晴らしい賞品構成です。2等の市庁舎の椅子はストックホルム市庁舎の為のコンペティションで1位を取り、カール・マルムステンの名前を知らしめた椅子です。この時の2位もマルムステンでした。

 数人で協力して製作する物がある中、僕の担当は6等のCaryngoカリンゴになりました。カール・マルムステンの作品の中では珍しい構造になっていて、脚の左右のボルト8本を外し、貫を取ることで革ごと畳む事が出来るようになっています。輸送に適しています。

 この椅子の製作が決まった時点で僕はメルマガNo.27で紹介している初めての椅子製作をしていましたが、全く異なる構造だったので興味を覚えました。普通、椅子は背側と、前部を作ってから一体にするのですが、この椅子の場合は左右を作ってからボルトで固定し、革をつけるようになっています。

 部材のデザインはシンプルで材料取りにもそれほど苦労はしませんでした。しかし、オリジナル図面にいくつも間違いがある事が判明し、その度に校内の学生寮に現存する古いカリンゴを持ってきて比較検討しました。さらに、その持ってきた椅子にも構造的欠陥が見つかったりして、先生と何度も図面上に修正線を引く羽目になりました。結局、過去の椅子よりも強度あるボルトを使用し、座面も革屋さんへ出向き、以前とは違う裁断法で注文することになりました。

 日本旅行から帰国後、夏休みまでの短い期間にも製作を進め、3年目が始まってすぐの抽選数日前に革を取り付けて完成しました。夏休み期間中にクジも大量に売れたようで、旅費もかなり返ってきたのがうれしかったです。

2等 ストックホルム市庁舎の椅子。

3等 北欧の極北の地に住むラップ人(サーメ人)の文様が彫り込まれています。

4等 2つの小さなテーブルを収納出来るようになっているサイドテーブルです。
5等 現在も生産販売されているマルムステンの代表的モデルです。
7等 シンプルなデザインですがとてもしっかりした作りになっています。
8等 生の木から削り出されているお玉です。
抽選当日。製作者本人が当選番号を引いていきます。
6等 僕が製作を担当したCaryngoカリンゴです。