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第45回 椅子1917の製作。

 

テレビ撮影も行われた戸棚の製作を終えた後、今度はマルムステンの椅子を製作するという課題に移りました。まずはカペラゴーデン内にある資料と図面を見ながら製作する椅子を選び出しました。今まで一人がけのソファーを2脚作りましたが、普通の椅子はまだ製作経験がありませんでした。

 僕が選んだのはカール マルムステンが1917年にデザインしたその名も"1917"。マルムステンは1916年に"市庁舎の椅子"で名声を得て、1917年にさらに様々な賞を受け、彼の作品展示会をLiljevalch美術館で発表する機会を得ました。

 そこではマルムステンは彼の理想"上品で綺麗に整えられたスウェーデン家庭”をテーマに家具インテリア作品を発表しました。その中の一つがこの椅子です。市庁舎の椅子と異なり、農家の家具から強い影響を受け、また工芸的な要素も含んでいます。

 僕がカペラゴーデンでこれまでに作ってきた物と比べると製作は容易そうですが、松と白樺の2種類の材で同時進行で素早く作るという事を自分への課題としました。オリジナルモデルは松に赤く塗装しています。

 まずは材料取りから始めました。最初の写真からも分かるように材が四方柾(4面とも柾目模様)になるようにしているので材料取りの時点でかなり多くの材が端材として無駄になってしまいます。この点は大量生産家具との大きな違いで、綺麗な家具を作る為にはとても重要になってきます。

南京鉋で加工。

 後ろ脚などはそれほど大きくカーブしていないので加工は容易ですが、手加工が必要となるのが背もたれの板でした。ここは南京鉋(なんきんがんな)で図面に指示されている形状へ仕上げました。同じ加工を同時に行うことで、ひとつずつ加工をするよりも効率よく素早く作業することが可能になります。

 材が異なる為に堅さや、刃物での加工のしやすさにも違いが現れます。同じような締め付け方だと松は簡単に傷が付いてしまうくらいですが無難に済みました。

2つとも接着終了。木の色が似ているのでこの写真からは材種を判別しづらいです。

 椅子下側のほぞ加工(他の部材との接合部分)をしようとした時に、運悪く機械の調子がおかしくなってしまいました。交換部品が届くまで何日間も続きの作業をすることが出来ない事になってしまいました。が、待つのも勿体ないので手加工でほぞを作りました。ほぞ穴との精度が気になりましたが綺麗にできて安心しました。

 ”機械で出来ることを手でも出来るように。”そして、”手で出来る事と同じくらい、機械でも精度の良い仕事を出来るように。”する事が僕の目標でもあるのでスッキリしました。

普通に画材として売っています。

 松で作った椅子はオリジナルと同じく赤く塗装することに決めていました。まずは画材屋さんへ行き、そこで油絵用のイングリッシュ レッドを購入しました。これを亜麻仁油で溶き、塗料の準備完了。塗装自体はそれほど難しくありませんが、問題なのは乾くのに3,4日かかることでした。2、3層に重ね塗りをするだけで1週間以上かかってしまうのです。完璧に乾くにはさらに時間が。。。

 白樺で製作した方は北欧家具でよく使われるソープ フィニッシュを選びました。塗るのも乾くのも速いのですが今度は表面の毛羽立ちがすごくて困りました。試行錯誤をしているところで先生が通りがかり、テクニックを教わったらあっさり解決。石けんだけありツルツルになりました。

 図面では座は成形合板に薄いクッションとなっていましたが座り心地が堅そうなので、自分で座面張りをすることにしました。今回が2回目だったので試行錯誤しつつもなんとか綺麗に張ることができました。ただし、厚くしすぎたようで日本人の僕には座面がやや高くなってしまいました。この点は今後、改善したいです。

 白樺の方は籐張りの座面にするつもりなのですが、実はまだ何もしていません。。。座ることに出来ない椅子が一脚、我が家に置かれたままです(笑)。

 この椅子を製作していた時期は、マルムステン校への受験、妻の出産など色々と忙しい時でしたが、ミスをせずに集中して二つの物を作り上げるという目標通りに出来たと思っています。

かなりの部分が無駄になることがよく分かります。

数日、材料を寝かしておきます。

後ろ脚。背もたれがまっすぐに近いので座り心地はそれほど良くありません。
仮組み中。
背もたれの上の部。
背側の接着。
塗装開始。油絵の具なので服を汚さないように注意。
下地を作ってから馬毛でクッションを作っていきます。。