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第8回 スウェーデンの出産室。

 前号で紹介したスウェーデンでの両親学級のメンバーで病院の出産室見学に行きました。僕の住んでいる地域では子供を生む場合は必ずその病院へ行く事になります。MVC(助産婦さんのいる所)では検診はしても出産はできません。この見学は実際、それぞれが出産をする場なので皆、真剣です。

 総合病院の一角に産婦人科のエリアがありました。出産室と出産後に親子が滞在出来る宿泊施設が集まっています。出産室は全部で8部屋。満杯になってしまう事はまずないそうで、その中の空いていた部屋を見学しました。

 驚いた事は僕の持つ、出産室のイメージとは全く異なる事でした。室内は手術室のような雰囲気は全くなく、妊婦が少しでもリラックス出来るように配慮されていました。例えば、ゆったり出来る椅子や、雑誌類。好きな音楽を聴けるようにステレオがあり、この地域の有名な画家の絵がベッド背に掛かっていました。

赤ちゃんのお手入れ台。体を洗えるようになっていてオムツなども用意されています。

 椅子は付き添いの者が休むのにも都合が良いです。もちろん父親の僕は出産に立ち会いました。最初からそのつもりでしたが、この時は室内を見るのが楽しいくらいでした。CDは本人が希望すれば出産中もかけ続けられます。部屋の照明も間接照明が多くなっています。

 コンピュータが設置されていて、「メールも出来ますか?」と聞くと、自分のコンピュータを持ってくればネットワークに繋げて良いと教えてくれました。このコンピュータは連絡事項や、出産経過を逐一書き込んでいく為に各部屋に設置されています。当直が変わっても妊婦のページを開くだけで全てが分かります。もちろん妊娠初期からの記録もです。MVCから回線が繋がっているようで、たぶん全国で同じデータを共有出来るようになっています。もし旅行中に出産が始まっても安心です。

 奥の棚は妊婦の家族の為の鍵付きの戸棚です。右側の流しやコンピュータは助産婦さん達が使用します。

 ベッドは介護用ベッドのように背もたれが上がるようになっています。出産の段階に合わせて色々と変形出来るようになって、踏ん張る時の為に手を握る取っ手もありました。ベッドの背もたれ側に絵が掛かっているのですが、ボタンを押すと絵が下がり、裏側に呼吸を助けるボンベ等が隠されていました。

 他に室内には出産後の赤ちゃんを洗ったりお世話をする流し付きの台が据え付けられています。流し台ごと高さを上下出来る優れもので、世話をする者の腰など体に負担がかからないように配慮されていました。出産直後の赤ちゃんの為に上部にはヒーターが付いていて凍えないようになっていました。

 出産前の陣痛を和らげる為のお風呂も見学しました。日本と比べると浅めですが脚を伸ばせるバスタブで枕まで付いています。入浴中はロウソクの光が灯せるように台がいくつか付いています。未熟児や、何か異常がありそうな時に最初に連れて行かれる部屋もちょっとだけ見学。新生児用の呼吸マスクはとても小さく可愛かったです。

お風呂です。壁とバスタブ脇にロウソクを置けるようになっています。

 出産後に親子が数日(通常3日)滞在する部屋は出産室からすぐの所にあるのですが、まるでホテルのよう。3食の料理はレストランから届き、アレルギーや、ベジタリアンなどの希望も考慮してもらえます。それとは別にいつでも軽食が食べられるようにもなっていました。
 部屋は個室になっていて子供とは同室になれるようにいます。希望すれば父親も宿泊出来るようになっています。出産に至るまで費用はほぼ0ですが、ここでの滞在費は少々かかります。一泊約1200円で、父親は2200円ほどで3食全てが賄われるそうです。

 未熟児などを最初に移す保育器です。

 あまりにも環境が良いので聞いてみると、スウェーデン全てがそうだというわけではなく、2年前に改装したばかりのこの病院の設備が素晴らしいのだそうです。僕たち二人は出産をしにここへ再び来る事が待ち遠しくなりました。

 数日後、日本でも報じられましたが、「母親になる環境が世界でもっとも恵まれているのはスウェーデン」とのことで、もう何も心配する事は無いと思いました。