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スウェーデン木工留学記

ストックホルム編

2004.07.14

第22回 マルムステン校 春の展示会

こんにちは、須藤 生です。先週までの製作風景と異なり、今回はマルムステン校の 学生の作品をたくさん紹介します。まずは僕たち家具製作科一年の作品からご覧下さ い。

当初はスウェーデン中部で開催される催しの会場に展示をする予定でしたが、現地へ行ってみると予想外に僕たちの展示スペースには外気の流れがあり、湿度の上下がかなり大きいことが分かりました。丸2カ月間もその中に置いておくことは、僕たちだけではなく同行していた先生、校長ともに不安を覚え、残念ながら出品を取りやめることになりました。ということで予定を変更して、約2週間ストックホルム市内にあるスウェーデンの伝統工芸品を扱う店の中で展示させてもらいました。


5人の一年生の中で完成までこぎ着けることができたのは3人だけで、他の二人は来期に製作を続けることになりました。これはラスムスの作品。


壁に取り付ける文机、という感じでしょうか。


毎日のように遅くまで学校に残り製作をしていただけあり、彼の作品はとにかく複雑な構造をしています。でも、マルムステン校の学生だからこの様な物を作らないといけないというわけではありません。学校生活に時間を捧げる者もいれば、もっと他の事に時間を費やす者もいます。僕の場合は、家族との時間が一番重要です。


僕の息子は早くも一歳になりました。そこでプレゼントとしてこのノルウェーのStokke社製Tripp Trappを買いました。日本では5種類の色のモデルが販売されていますが、実際は10種類の色モデル(クリアー塗装も含む)と無塗装の物があります。

僕は無塗装の物を選びましたが、これが加工後の本当に何もしていない状態(笑)。そのままで使用すると、簡単にご飯などがこびり付いて汚くなってしまうことは容易に分かりました。説明書には同梱されていたオイルワックスを塗るように指示されていたので、ベランダで塗り、磨き、数日乾かす羽目になりました。この様な作業は普段から行っているので問題ないのですが、大量生産品で顧客に仕上げ塗装をさせるとは最初は驚きました。でも、好きなように塗装することも可能なので面白いかもしれません。


春の展示会が行われました。この一年間の一年生の作品から、職人試験作品の展示と、各科の作業場など校内が公開されました。マルムステン校はビル内にあり、地味な建物なので少しでも目立つように工夫し、ストックホルム内で発行されている新聞2誌にも広告を出しました。


家具製作科
3年生が2年生の時に製作した職人試験作品(去年までは2年次に職人試験の受験をしていましたが、今年からは3年次になりました)。立方体のユニット部を組み合わせることで様々な形状にすることができます。


1~2年生は2月の展示会でも公開した物を中心に出品しました。


家具の生地張り、装飾科(Upholstery)
3年生が職人試験作品として製作した寝椅子。彼はデザインから、製図、木のフレームの製作、生地張りまで全てをこなしました。


これも職人試験作品。彼女は古いソファーのフレームを見つけ出して製作しました。


2年生の職人試験受験前の作品。座面のマットにはガチョウの羽がぎっしり入っています。座り心地も最高です。


椅子等の生地張りで特に重要なのが、この様に布地にシワがよる場所です。美しく均等にシワを寄せる技術が必要です。


これも職人試験前の作品です。


3年生の職人試験作品。この後に表地を張ります。


複雑な形状をした部ですが、ピンを使って生地を様々な角度へ引っぱりつつもシワが生じないように寄せます。もちろん、内部の馬毛の量も影響してきます。


1年生が課題として生地張りをしたマルムステンの椅子たちです。この後に化粧用の表地が張られます。


1年生3人の共同プロジェクト。外部から注文を受けてJosef Frankヨーゼフ・フランクのソファー968(もしくはバナナソファーと言われます)の張り替えをしています。注文主が選んだSven Markeliusスヴェン・マルケリウスの生地を張っています。


家具修復科の作業風景。これも外部からの注文で修復中のロココ様式の家具。接着がはがれてしまっている部をまず修復しています。この様にマルムステン校は、どの科に入るとしても木工の基本的な技術と知識が必要です。


家具デザイン科
2年生の作品。プラスティックで成形しています。


3年生の卒業製作。5感をテーマにしています。彼は今年で卒業ですが、同じくストックホルム市内にあるコンストファックという芸大のマスターコースへの進学が決まっています。


同じく3年生の卒業製作。フェルトに樹脂をとけ込ませて成形しています。


これも卒業製作。商品化を目指して製作した椅子と脚置き。


卒業製作。彼女は卒業直前の春に母親になり、他の者より早く製作を終えました。この椅子はストックホルム家具見本市にも出品しています。


一貫したテーマでの作品。


自分自身の課題製作があまりにも忙しかったため、展示会に出品されている物について調べる余裕がなく簡単な説明だけになってしまいましたが、いかがでしたか? 展示会の期間中は校内にカフェも開設されていてたくさんの訪問がありました。

では、夏休みなのでネタがあるかわかりませんが、また次回~!

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!