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スウェーデン木工留学記

ストックホルム編

2009.03.18

第73回 ストックホルム ファニチャーフェア2009(後編)
グリーンハウス

こんにちは! ストックホルムの須藤です。

前回に引き続き、2月にストックホルムで開催された家具見本市の紹介をします。見本市といいますと商談の場、という感が強いのですが、無名のデザイナーにとってはチャンスを掴む場でもあるんです。そんな学生や若手デザイナーの作品が集まるGreenHouseを今回は紹介します。ミラノサローネのサテリテと同じく、熱気溢れる場です。

Jessika KälleskogによるテーブルCUT。机の端面処理で極めて薄く見えるシンプルなテーブルです。角度と光によっては不思議な見え方をする仕掛けが施されています。


ちょっとした錯覚を利用したアイデアで面白いです。


マルムステン校の家具デザイン科を卒業したてのOlle & Stephanが出品したのが、この戸棚。塗装してこの柄を描いたのではなく、着色した板を用いています。左上に留まっているフクロウが可愛いでしょう。


彼らの作品は、現代的な工業生産向けのデザインとは一線を画していて好感を持てます。この椅子は日本の編み籠からヒントを得て作ったそうです。


吉田 智史さんのスタッキング可能な椅子Risti。重ねている際の姿が綺麗で驚きました。


会場内ではUng7というデザイン コンペの選出作品も展示されていました。応募200作品の中から選ばれた30作品ですので、どれも興味深い物ばかりです。11月には日本にもやって来ます。


その作品たちのひとつ、このFiction Cabinetは濱中淳子さんの作品。2007年のベックマンス校の卒業展示会で気に入ったものでしたので、僕も嬉しいです。ディテールに溢れた綺麗な戸棚です。


カペラゴーデン(僕が2000-03年まで学んでいた学校)で一緒だった、Maria Johanssonの作品。作品名は直訳すると、“歴史と会話の保存ケース”という感じでしょうか。実用性はありません(本人がそう言っていました)がとてもアーティスティックだと思います。


「雨が降るとき」という映像作品に、釘付けになっている僕のこども達。


グリーンハウスには美大やデザインの学校も出展をしています。スウェーデンのヨーテボリにあるHDK(Högskolan för Design och Konsthantverk / School of Design and Crafts)は、ストックホルムのコンストファックと共にとても良く知られた学校です。この机も可愛いですよね。


マルムステン校で一緒に学んだラスムスが、HDKのマスターコースでデザインを学び始めました。松で作った椅子に、革を被せています。軽い感じのする松から、重厚感のある表情になっています。


カペラゴーデンの展示会場には綺麗で高品質な家具たちが並んでいました。シンプルですが、脚の形状が凝っていて良いですね。


これはマルムステンが1960年にデザインしたLillbo。製作は最高難度ですが、シンプルでとてもそう見えません。材はカエデと白樺でしょうか。


マルムステン校の家具デザイン科による展示。薄板のみで椅子を作るプロジェクトだと思いますが、面白い意匠です。


いつもながら、学生作品とは思えないほどの完成度に驚きます。


スウェーデンでよく見かける構造ですが、ベンチの座面を持ち上げると収納スペースが備わっています


試座中の娘。こんなのが自宅にあったら楽しそうです。


HDKのSteneby校の展示会場では、面白い物を見つけました。


Mia Hamborgがデザインしたスタッキング テーブル。
さっそく遊べそうだと気付いたようです。


各パーツの積み方を変えることで、色々なフォルムに変わります。小さい頃にこういうオモチャで遊んだことがある方もいることでしょう。


娘にとっては積み木の間隔だったのでしょう。長々と遊んでいたら、人だかりも出来てしまいました。「彼女は最高のプレゼンテーターね!」と褒められるほど(笑)。


6人の若手女性デザイナーが、このファニチャーフェアの為に、たった5日限定のカフェを作りました。赤十字との共同プロジェクトで、家具や素材はスウェーデン企業から提供を受けています(会期後には、赤十字へ寄付)。


いつもながら、学生作品とは思えないほどの完成度に驚きます。


このランプシェードは何で出来ていると思いますか? 皆さんもキャンプやバーベキューパーティで使ったことがあると思いますが、紙のお皿です。距離をおいて見ると全くの別物に見えてしまいます。


前後編の二回に分けて僕好みの視点で紹介してきましたが、いかがでしたか。実際のファニチャーフェア会場にはもっとたくさんの家具たちが並んでいます。毎年、2月の第一週頃に開催されていますので、皆さんもチャンスがありましたら、ぜひ足を運んでみて下さいね。

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!