44

 


第44回 2人のゲストティーチャー。

 

 カペラゴーデン3年目の冬、ゲストティーチャー(講師)を招いて1週間の特別コースが2度行われました。No.20で紹介した木工旋盤の先生もそうですが、カペラゴーデンでは時々、その分野の専門家による授業が行われます。

 まず2002年12月にデザインの集中コースが開催されました。工業デザインの分野で活躍しているデザイナーが講師です。まず最初に行った事は・・・、6本のマッチを渡され、言われた課題が「このマッチを使って4つの3角形を作りなさい。」というものでした。難しいのですが分かってしまうと、なるほどと思わせる答えです。柔らかい発想をするようにという事を知る狙いがあったようです。ちなみに僕は一番に出来ました♪

 その後からは立体図(投影法など)の演習などの基本的事項から、物を作り出す事についてまで話は進みました。身近な者の為に作る製品と、不特定多数が使用する製品(この場合は工業製品)を考え出す時のアプローチの違いを学びました。工業製品はあらゆる要素、例えば、予想される使用者の年代、使用環境、市場、色彩、クオリティ、スタイルから販売価格に見合う技術的妥協点はというように、何度も議論が重ねられて製品へなっていきます。いくつかの製品を見ながら解説が進みました。

 そして毎日の授業の終わりに一日課題が発表されました。期日は翌朝。ようするに放課後の時間を使って考えねばいけません。4人一組で講義で学んだように、アイデアを出し合い、一つ一つの要素を議論し、模型なり発表の準備を一晩でするというスピード課題でした。

 その内のいくつかを紹介します。「玄関の靴棚」という課題。僕は縦に置く下駄箱をまず考えましたが、雨や泥がついて帰宅した場合は水滴が下段の靴を汚す可能性があります。今度は横長の棚になり、靴を履く時に座れると良いとの基本的なアイデアを決めました。その後は、じゃあどれくらいの大きさか、強度を出すには素材は何が良い?高価になりすぎないか?と議論が続き、小さな10分の1模型を作りました。

 ここからは僕の出番で、模型の写真を撮り、靴と人物像を重ね合わせプリントしました。かなり適当な画像処理でしたが、それでも雰囲気は充分に分かり発表でも良い評価をもらう事ができました。コンピュータを使うなり、絵を見せるのだとしても、顧客にイメージを充分につかんでもらう事のできる良いプレゼンテーションは重要だと言われました。

 もう一つは、「薬の箱」。一般家庭で必要な物をきちんと収納できる物を考えるように指示されました。前回もそうでしたが、4人でまずはアイデア・スケッチを見せ合い、お互いの考えの良い所、問題になるかもしれない点などから、グループ内のアイデアを決定しました。

 2つ合わせにできるアルミ(もしくはステンレス)の箱で壁に取り付けられること、そして収納する物も決定しました。僕たちがさらに考えたのは、見たら欲しくなるような広告を作ろうということ。そこでまずは雑誌の広告をチェック。僕たちの目に留まったのはシャープの液晶テレビの宣伝でした。さっそく拝借(実際はいけない事です。)し、僕の知識を総動員(笑)。見事に薬箱の広告に生まれ変わりました♪

 4日間の短期集中コースで実習課題もたくさんあり、かなり疲れましたが非常に集中して課題に取り組む事ができ有意義な時間でした。

マルムステンの椅子がたくさんあります。

 そして2003年2月には椅子張りの特別講習がありました。木工科の2年生、3年の僕とテキスタイル科の希望者が参加しました。講義までにそれぞれ、張り替えをする椅子を見つけるように言われました。校内にある椅子を持ってくる者が大半でしたが、僕は夏の旅行時にコペンハーゲンでこの時にと購入した椅子(座面無し)を使用しました。

 僕はこの時が始めての座面製作で予想以上に難しいことに四苦八苦しました。詰め物の加減も、座面下にはるベルトの張力もどれくらいが適当かは全然分かりませんでした。その度に先生にコツを教わりつつ、過程を写真に収めていきました。

下段部のカバーをします。

 簡単に工程を説明すると、まずは基本となる下側(中身はかなり荒めの草)を仕上げ、上部にも同じようにクッションを作り、その上に表面用の布をかぶせます。上部の中身は馬毛などの感触も良い物を詰め物とします。詰め物は毎回、テニスボールくらいの大きさだけつまみ、張り巡らしてある糸の下へ挟みます。この糸があるお陰で長く使用しても片寄ったりしないようになります。とはいっても量の加減が難しい・・・

 布を引っ張る為に針を大量に使用します。この針の刺し方が当初はよく分からず困りました。誤った刺し方をすると対面の布を引っ張った時に、簡単に抜けてしまい張力(布をピンッと張る状態)を出す事ができないのです。正しく刺さっていると、その場でしっかり留まってくれます。

縁の処理後。

 そして布を固定するのには断面が四角になっている釘を使用します。ホチキスで留める簡単な方法もありますが、伝統的な手法を教わりました。この方法のコツもなかなかつかめず苦労しました。磁石になっている特殊な形状のトンカチの先端に釘をつけ、狙いの位置へコンッと釘を打つのですが、難しいのはこれを全て片手で行うからです。トンカチを持ったまま、先端(磁力を帯びている)に釘をつける(拾う感じで1つだけ。しかも正しい向き)のです。先生はさすが上手でトンットンッと作業が進むのですが、僕などは釘をトンカチで拾う事自体が大変で2,3個まとめて付いてしまったり・・・

角の処理。

 上面に化粧用の布をかぶせますが、座面の角の処理にも技術が必要です。先生曰く、ここが美しく出来ていないようじゃダメなんだそうです。何通りかある中から、しっくり来る方法を選びました。

 この椅子は現在もいつも使用していますが、詰め物もちょうど良い具合になり、座り心地良しです。座面張りを教わる機会はなかなか無いのでとても良い経験になりました。が、現在、僕の在籍するマルムステン校で、座面張り科のレベルの高さを見て愕然。僕のなんてはずかしくて見せられません(笑)。

こんな感じにイメージを描いていきます。

靴を履いているイメージ。

ちょっと自信のあったスケッチですが、構造が複雑だったので却下。

 

 

 

 

座面張り開始。
詰め物を押さえるヒモを張り巡らします。
初めての詰め物。
上下に糸を通し、詰め物を固定します。
上部には感触の良い詰め物を使います。
その上にまた布をかぶせます。
感触をもう少し良くする為に細かい綿を。
化粧用の布に模様がある場合、綺麗に張るのはずっと難しくなります。
釘を打って固定します。