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スウェーデン木工留学記

ストックホルム編

2008.10.15

第69回 卒展巡り2008 マルムステンCTD

こんにちは! ストックホルムの須藤です。ひき続き「卒展巡り2008」シリーズをお送りします。今回は僕が在籍するCarl Malmsten CTDです。相変わらずレベルが高くて見応え一杯でした。

クラッシュした椅子、絆創膏型のマット(寒い時は左右のバンドが膝掛けにもなる)、ドロップ跡の付いた机。机は無垢材なのですが、牛乳をこぼしたように削られた部位はコーティングが施されています。ここになら濡れたコップを置いても平気! ということだそうです。


家具デザイン科の学生による卒業作品。家庭向けのワーキングベンチ(工作用の作業台)を考案しました。これは欲しい。ちょっとした工作時に重宝しそうです。


この学生は、地場産の素材のみを使用。スウェーデンの白樺、ウール、羽毛。問題が生じたとしても、修理して使い続けることが出来ます。


待合室向けの椅子。クッションの取り付け方が面白い。腰と背を支えながら、脇腹付近にも軽く支えが入ります。


家具生地張り科の学生の職人試験作品。ボロボロになっていた物を張り替えた、ロココ様式のソファーです。ものすごくレベルが高い。


マルムステンCTDといえば家具製作科。展示会場には職人試験作品が並んでいました。


これはフィンランドから来た学生の職人試験作品。凝った構造になっています。


濃い色の材(ウオールナット)と明るい色の材(カエデ)の組み合わせは、組み手を見せるのに効果的。


これも職人試験作品。左角にある支点を中心にしながら回り、フタとなります。


デザイン的には大きな挑戦はありませんが、非常に模範的な作品です。


ウォールナットの外装に対し、内装は綺麗な楓(かえで)。綺麗ですね。


引き出しに付いている金具は特注品。上部を押すと、取っ手が出てきます。


鍵穴もピタリと埋め込まれています。


シンプルではありますが、このラインを入れるだけで特色あるデザインとなっています。


こちらは背中。背板のはめ合わせも上手に処理されています。


ちなみに作ったのは、右に立っている女性。合格おめでとう。


他校とは違い、規模が小さなマルムステン校では1年生、2年生の作品も展示しています。例えば家具製作科を例に取ると、卒業生(3年生)はたったの5人。それだけだと寂しくなっちゃうわけです。
でも、展示をするだけの素晴らしい出来栄えの作品ばかりなので、見応えいっぱいです。


これは、カール マルムステンがデザインした作品を二年生の学生が作りました。最高難度の机と言っても過言ではありません。象嵌はまだまだ練習が必要そうですが、凄く立派な机です。普通に買うと100万円はしてもおかしくないでしょう。


製作を行う作業場を見てみると、展示会には間に合わなかった椅子がありました。カンデル(スウェーデンのデザイナー)のソリテール。あとは仕上げのみでしょうか。


こちらにはカール マルムステンの「市庁舎の椅子」。非常に手間が掛かるデザインになっています。


各科の1年生の作品が並ぶ部屋へ移動してみたら、コンクリートを用いたベンチがありました。運ぶのが大変そうです(笑)。


これはデンマークの椅子だったかな。革がしわもなく綺麗に張れています。


曲げ木のスツール。詳しくは分かりませんが、特殊な加工を施した木を使っている。蒸気による曲げ木とは違うようです。


揺り椅子です。ユラユラと動かせるので僕の娘に好評でした(笑)。


突き板の扱いを学ぶ課題(JDNレポート第10回を参照)で製作した机(マルムステンのデザイン)です。


これもマルムステンの机。綺麗な象嵌が施されています。上の机と同じく引き出しが備わっています。


ウェグナー(デンマークの家具デザイナー)のカウホーンチェア。2年次の課題として、椅子を採寸し、図面を描き、全く同じ物を作るという課題をこなします。


ウェグナーのフォールディングチェア。折りたたみ椅子です。綺麗に編み上げていますね。


ウェグナーのバレットチェア。ハンガーの形状になった背もたれに上着、座を持ち上げるとズボン掛けになります。座面下には小物入れ。
これら課題製作の為に椅子を捜すのですが、自分で見つけてこないとなりません。個人やお店から借りてきたり、時には美術館などから貸与してもらいます。もちろん購入してきても良いのですが、なかなかそうはいきません。どれも普通に街中で買ったら一脚20-30万円はするからです。
それらの物を最高の素材を使って、自分で作ってみることは最高の勉強になることでしょう。


次回は王立芸大の作品展をご覧頂きます。面白いですよー。

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!